「どうして空はこんなにも青いのか」
詩で出てきそうな一文ですが、
この謎を真面目に考えてみます。
空が青い理由はよく次のように説明されます。
「波長の短い青色の光は大気で散らばりやすく、
波長の長い赤色の光は直進しやすいため、
青色の光が地表の私たちの元に多く届くから空は青く見える」
光の色を波長で分解したものは、光のスペクトルと呼ばれます。
下の図では、左側ほど波長が短く、
確かに青色は波長が短いことがわかりますが、
良く見てみると紫色の方がさらに波長が短いことが分かります。
すると、ここで次のような疑問が浮かびます。
「紫の方が波長が短いのに、なんで空は紫色ではないのだろう」
ここでは、この疑問に至極単純なモデルで答えることにします。
様々な色が目に届く
私たちが日中見ている太陽の光は白色です。
しかし、上のスペクトルで見たように、
光は分解すると実に様々な色が含まれていて、
それが合成されて太陽の白色になっています。
つまり、私たちの目には様々な色が届いていて、
私たちは、それら色を合成した色を「見ている」のです。
空の色についても同様に考えてみましょう。
波長の短い色ほど私たちの目に入りやすいということは、
単純に考えれば、紫色は一番目に入りやすく、
続いて、青色、緑色と続くと考えられます。
そうすると、下の図のように、空の色の中には
紫色が一番多く含まれていて、
青色が2番目に多く含まれるという風に
それぞれの量の違う色が含まれているでしょう。
実際には、図のように成分量が綺麗に直線的に減衰しないでしょうが、
ここでは、単純化して考えることにします。
紫が多くても紫にはならない?
ここでポイントになってくるのは、
紫色を一番多く含むからと言って、
それぞれの色を混ぜた色が紫っぽいとは限らないということです。
実際に上のような成分量に従って、
色を合成してみたのが下の図です。
成分として、どこまでの波長を含むかを変えることで、
合成される色が変わってきます。
そのため成分量を変えた4通りの合成パターンを示してみました。
図の下のラベルは、合成するときに
何nmの波長から成分を0にするかを表しています。
400nm 程度だと、成分としてもほぼ紫なので、
合成した色も紫になりますが、
500nmや600nmまで含むと、合成した色は青色に見えます。
もちろん、どの合成した色も、紫が一番多く含まれるのですが、
紫、青、緑と量を減らしながら合成した色は、
青に近い色になるということが分かりました。
つまり、空の色には波長の短い紫色が多く含まれていたとしても、
他に含まれている色との合成で結局青っぽい色になるというのが、
空の色が紫ではなく青色であることの説明になると言えそうです。
まとめ
「波長の短い青色の光が空気中散乱して地表に届くから空は青い」
というよくある説明に対する疑問として、
「どうして青より波長の短い紫色ではないのか」
という問いについて考えてみました。
色の混合を考えると、例え紫が多く含まれていても、
合成すると青色になるのでしょうね。
余談ですが、成分を変えながら合成した色は、
カラーパレットとしても使えそうです。