クイックノート

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骨伝導イヤホン、耳栓した方がよく聞こえる?

一昔前に比べて骨伝導イヤホンの情報が増えてきたなと感じる今日この頃です。
実際、Google Trendsでも検索が増えていることが確認できます。

骨伝導イヤホン自体は何年も前から興味があったのですが、
そろそろ買い時なのかなと思い、ついに買ってしまいました。
まだまだ珍しい左右に分かれた骨伝導イヤホンです。

早速、手に入れた骨伝導イヤホンで色々と遊んでいる時に、
ふと耳の穴を指で塞いでみました。
すると、音が大きく聞こえました
耳を塞ぐと逆に音が大きく聞こえるというのが不思議で面白かったので、
何故この現象が起こるのかを調べてみました。
この記事では、調べた内容をまとめていきます。

耳栓をすると音が大きく聞こえる

骨伝導イヤホンを持っている人は、骨伝導イヤホンで音楽を聴いているときに、
耳の穴を塞いでみて下さい。
といっても、骨伝導イヤホンを持っている人はまだまだ限られていると思います。

そこで、実際のイメージを掴んでもらうために、
耳を塞いだ時の音の聞こえ方の変化のイメージを動画にしたので下からご視聴下さい。
最初は通常の音で、二番目に骨伝導イヤホンの音、
三番目に耳栓しながら骨伝導イヤホンで聞いた時の音です。

完全に再現できているとまでは言えないですが、
イメージとしてはこんな感じです。
耳を塞ぎながら骨伝導イヤホンで音楽を聞くと、
若干こもった感じになりつつ、音が大きく聞こえます。

骨伝導と耳栓の歴史は長い

調べはじめてすぐに分かったのですが、
実はかなり昔からこの現象は知られていました。
例えば、『骨伝導最小可聴値の耳栓による影響』という、
まさにそのものなタイトルの論文は1953年に発表されたものです。

最小可聴値

「最小可聴値」という耳慣れない言葉が出てきますが、
これは音が聞こえる最も小さい音の大きさです。

被験者の音の聞こえ方を調べるときに、
流した音が「どのくらい大きく聞こえますか?」と聞いても
「どのくらい」かを表現するのは困難です。

ところが、「この音が聞こえますか?」と聞けば、
YesかNoで明確に答えることが出来ます。

そこで、音の大きさを変えながら、
どこまで小さい音が聞こえるのかを調べるというアプローチがよく取られるようです。

聞こえ方の再現方法

この論文では、音の高さと音量を変えながら、
周波数毎の「最小可聴値」が耳栓をした時としなかった時で
どう変わるかが測定されています。
その結果、150〜200Hzをピークとして全体的に最小可聴値が
増幅されることが示されています。

先ほど見ていただいた動画は、音の増幅値のデータを元に作成したものです。
音の加工方法としてイコライザーというものがあり、
これは特定の周波数毎に音を増幅・減少することが出来ます。

つまり、上のような周波数と増幅幅のデータがあれば、
イコライザーで音を再現することができるのです。
もちろん、最小可聴値のデータなので、
普通に聞こえる音を同じ幅だけブーストしていいものなのかという問題もありますが、
出来上がった音源は割と実際の音の特徴を捉えていました。

耳栓で音が大きく聞こえる理由

骨伝導イヤホンをしている場合、耳を塞ぐと音が大きく聞こえるのは何故でしょうか?
最初に頭に浮かんだのは、下の二つの説です。

  1. 耳栓により環境音によるノイズがカットされた結果、相対的に音源の音が大きく聞こえるようになった
  2. 耳栓に振動が伝わることで、耳栓がスピーカー(?)の代わりになり、物理的に音が増幅された

前者は、音自体は大きくなってないけど、
頭の中の処理(ソフトウェア処理)によって音が大きくなるというもので、
ここでは「ソフトウェア仮説」と呼ぶことにします。

後者は、音そのものが何かしらの理由で物理的に増幅されるというもので、
「ハードウェア仮説」と呼ぶことにします。

耳栓と鼓膜の間の空間の振動

結論としては、「ハードウェア仮説」の方が正解のようです。
上に書いたように耳栓がスピーカーとは行かないですが、
耳栓と鼓膜の間の密閉された空間の空気の振動が生まれることで音が増幅されるようです。
ただ、骨伝導から空気の振動を生むまでの経路については諸説あるようです。

どうやら空気を閉じ込めておくことが大事のようです。
そのことを簡単に体験する方法を考えてみました。
まず、耳を指の腹で塞ぎます。
そして、塞いだ指の爪をもう片方の手の爪で優しくコツコツ叩きます 。 (大きな音なので、くれぐれも優しくして下さい)
そして、塞いだ指をずらして隙間を作った時と密閉した時で音の聞こえ方を比べます。

やってみると確かに、完全に密閉した時の方が音が大きく聞こえます。

ソフトウェア仮説の反例

音源以外の雑音が消えることにより相対的に大きく聞こえるという効果については、
無音室で実験されて否定されているようです。

無音室を準備するのは難しいので、簡単に確認する方法を考えてみました。
それは、片耳に骨伝導イヤホンをつけて、
もう片方の耳を塞いでみるというものです。

こうすれば環境音は半分カットされるはずなので、
環境音が影響するなら、聞こえ方に変化があるはずです。
確かに、骨伝導イヤホンをつけていない方の耳を塞いでも聞こえ方に大した違いはなく、
ソフトウェア仮説はやはり分が悪そうです。

まとめ

骨伝導イヤホンで遊んでるうちに発見した「耳を塞ぐとよく聞こえる」現象を調べてみました。

実は遥か昔から知られている現象だったことに驚きましたが、
まだインターネットの存在しない年代の論文もオンラインで読めてしまう現代の便利さを改めて感じました。

参考文献

  • 大野壽彦, and 河合平司. "骨伝導最小可聴値の耳栓による影響." 日本音響学会誌 9.2 (1953): 130-132.
  • 渋井弘一. "耳栓骨導の研究." 日本耳鼻咽喉科学会会報 62.7 (1959): 1495-1512.
  • 横地建夫. "音の骨伝導に関する研究." 日本耳鼻咽喉科学会会報 61.8 (1958): 1243-1279.
  • 大和田健次郎, 古賀慶次郎, and 中村よし子. "正常聴力者最小可聴値の測定." 日本音響学会誌 11.4 (1955): 213-218.
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