クイックノート

ちょっとした発見・アイデアから知識の発掘を

通信料の値下げの恩恵は受けられない?~端末・通信代分離~

ついに、docomo が携帯料金の値下げの検討を始めたことがニュースで報道されました。

「携帯料金は4割は下げられる」という官房長官の発言や、
総務省での有識者会議が開かれるなど、
携帯会社に対する値下げに向けたプレッシャーが高まっている中、
ようやくの検討に踏み切ったようですね。

ニュース報道によると、docomoで検討されているのは、
端末・通信代分離による値下げです。

これは、ざっくり言ってしまうと、
これまでの「スマホ本体代は実質0円」のように、
本体代を月々の通信料に組み込みつつ割り引くスタイルから、
本体代は区別して、通信料そのものの値下げに踏み切るというものです。

ここで疑問に思うのは、本体代が切り離されると、
通信料が安くなっても、ユーザーが支払う総額は変わらないのでは?ということです。

そこで、この端末・通信代分離の効果について、
もう少し考えてみることにしましょう。

端末・通信代分離とは

端末・通信代分離とは、
現状では、通信料に組み込む形でまとめて支払うことの多い
携帯電話の本体代を、
通信料から分離するというものです。

これを分離すると、携帯会社は今までサービスしていた本体代の分を、
通信料の値下げに回せるので、通信料そのものの値下げになるということです。

と言っても、今の携帯料金の内訳がよくわかっていないと、
ピンとこない話なので、今の支払い形態と、
分離後の支払い形態を比べてみることにしましょう。

本体代を組み入れたプラン

分離プランの逆の例として分かりやすいのは、
「本体代実質0円」というプランです。

この実質0円プランでは、
本体代は月々の分割払いで、
その代わり通信料から、
本体代の月払いと同額の金額を割り引くことで、
本体代が相殺されるというしくみです。

f:id:u874072e:20181030143933p:plain

結果的には、携帯会社が本体代を肩代わりしてくれたようなものになります。

実質0円までいかなくても、本体代がお得になるキャンペーンなどは、
これと同様に、本体代を一部携帯会社が肩代わりしたものとなっています。

ユーザーの月々の支払は、
本体代+割引後の通信料
ですが、本体代が元の通信料から割り引かれていることを考えると、
ユーザーの支払う金額は結局
元の通信料
という携帯会社が設定した金額をそのまま払っていることになります。

端末・通信代分離

さて、それでは通信料値下げのために検討されている分離プランとはどういうものでしょう。

分離プランでは、本体代と通信料を分離して、
上のような本体代の相殺をやめるかわりに、
通信料自体の値下げを行います。

問題はこの値下げがどの程度の金額で行われるかです。

というのも、これまでも、本体代分の値下げはされていたので、
それ以上の値下げでなければ、
ユーザーが支払う料金の総額は
変わらない、もしくは、増える
ということになってしまいます。

これについては、今後の docomo の発表を注視していくしかないですね。

分離プランはユーザーにとって得か?

分離プランでは、これまでの本体代と通信料をセットにして割り引くプランから、
本体代は別にして、通信料そのものを値下げるものでした。

確かに通信料は下がるのですが、
これまでの本体代のサポートがなくなってしまうと、
結局、私たちが支払う金額は安くならないのではという疑問が残ります。

そこで、今行われている本体代サポートと、
今後、行われるであろう通信料の値下げを想像して、
比べてみることにしましょう。

現状docomoでは基本的な料金構成で5900円~とされていて、
政府のオーダーである4割をクリアするには、
2360円の値引きが必要です。
docomoとしては、この2360円がゴールになるでしょうから、
それ以上の値引きは考えにくいですね。

一方で、docomo では「月々サポート」と呼ばれる本体代を、
通信料から割り引くサービスを行っています。
機種にもよりますが、最大3000円程度が月々の通信料から割り引かれます。

ということは、分離プランで本体代のサポートをやめて、
通信料を政府のオーダー通り4割引したところで、
ユーザーが支払う料金は今より安くならないということですね。

機種を持ち続ける人にとっては得?

上で、本体代のサポートの方が、
通信料の4割よりも実は大きいということを見ました。

しかし、本体代のサポートは、本体代を分割払いしている間しかうけられません。

本体代の分割払いが終わった後も、本体代サポートの恩恵を受けようと思うなら、
機種変更して、新しい機種を購入する必要があります。

つまり、本体代と通信料がセットで割引となっている場合は、
常に機種変更をして、常に本体代を支払い続けている状態でないと、
割引の恩恵を受けられないのです。

一方で、分離プランによって、通信料自体が値引きされていれば、
本体代を払い終えた後には、当然、通信料だけを払うので、
値引きの恩恵をダイレクトに受けることができます。

f:id:u874072e:20181030153845p:plain

現状、本体代の分割払いは2年がデフォルトとなっているので、
2年を超えても機種変更しない人にとって、
分離プランは得なのかもしれませんね。

本体代の値下げは期待できる?

携帯料金が高い原因は、キャリアの通信料だけではなく、
本体の価格が高いことにもあります。

iPhoneなんかを見ていると、
この本体の価格は、年を経るごとに、
下がるどころか、値上がりしているように思えます。

この値上がりを支えている一つの原因と考えられるのが、
通信料と本体代をセットにした料金プランの存在でしょう。

上で述べたように、本体代を通信料から割り引くプランを利用する場合、
本体代を支払い終える2年毎に機種変更しないと、割引の恩恵を受けることができません。

つまり、2年毎にユーザーが新しい機種を購入する流れが作られているのです。

スマホのメーカーからすると、この状況は非常に喜ばしいことで、
いつでも新しい機種が売れるという状態ができあがっています。

そのため、スマホの本体代を安くするよりは、
ユーザーの気に入りそうな新しい機能を追加したスマホを開発するという方向に、
メーカーが向かってしまいがちとなります。

一方で、分離プランによって、同じ機種を使い続ける方が得という状況になると、
本体が売れにくくなり、メーカーの企業努力がより一層重要となります。

その中で、メーカーが本体代を下げるように、
スマホの開発の舵の方向が変えられると、
本体代自体の値下げにもつながるかもしれません。

f:id:u874072e:20181030155343p:plain

スマホの料金は、通信料+本体代ですから、
下げるならこの両方を下げるのが効率が良いのです。

通信料と本体代がセットになっている現状では、
本体代の違いは、通信料に吸収されてしまって、
メーカーの競争は価格ではなく機能ばかりに向かってしまいます。

分離プランは、このメーカーの競争を価格競争に一度立ち返らせることで、
通信料を下げるだけではなく、本体代を下げる効果を生むかもしれません。

まとめ

今話題となっている端末・通信料分離による通信料の値下げについて見てきました。

短い目でみると、今の本体代を通信料に組み込んで割引と、
それぞれを分離して、通信料を単独で値下げするという方法では、
消費者が支払う合計のスマホ代が安らないかもしれないということを見ました。

ところが、分離することによって、
同一機種を長く使い続ける人が得をします。

そして、キャリアが本体代のサポートをやめることで、
メーカーの価格競争を促され、本体代の値下げがされる可能性についても見てきました。

いずれにせよ、分離プランを導入する効果は、 少し長い目で見ないといけないようですね。

分かりづらいと言われているスマホの料金体系ですが、
今回の分離プランの効果も、すぐに分かるものではなく、
結局「わかりづらい」ものになりそうです。

プライバシーポリシー