クイックノート

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認知バイアスの一覧表

認知バイアスとは、
人が物事を認知する際に、
ある偏った認知の仕方をすることを指します。

冷静に考えると、違うのに、
どうしてもこう考えてしまうというのが、
認知バイアスのお決まりの型になります。

認知バイアスは、人の限界とか、間違いとも言われますが、
そんなマイナスな面ばかりではなく、
限られた情報で素早く判断するために必要という、
プラスの面もあると言われています。

その場合は、認知バイアスという言葉ではなく、
ヒューリスティック」という言葉が使われることが多いようです。

認知バイアスヒューリスティックには、実に様々な種類があり、
似ているようで微妙に違ったり、
関連し合っているものもあります。

ここでは、そんな認知バイアスの種類をまとめておきたいと思います。

代表制ヒューリスティック(Representative heuristic)

代表制ヒューリスティックとは、
典型的なイメージを意思決定の際に重視しやすいという傾向を指します。

偏見の目で見るという状況がしっくりくるでしょうか・

例えば、目の前に作業着を着た男の人が立っていたとして、
その人の職業は何ですかと聞かれたとします。

その人のことを何も知らなくても、
「工事関係の人」と答えてしまい勝ちですが、
もしかすると、好きで作業着を着ているだけのお医者さんかもしれません。

偏見の目でみることは、 良く知らない人でも、なんとなく当たりを付けられるという点で、
判断を早くすることに役立っています。

もちろん、間違う可能性を十分に理解していないと痛い目を見ることもあり得ます。

連言錯誤(Conjunction fallacy)

連言錯誤とは、
特殊な状況ほど起こりやすいと考えてしまう傾向を指します。

次のような不幸な人を考えてみましょう。
歩いていると、石につまづき、転び、カバンから財布が飛び出し、
道路の水たまりに落ちて、お札がびしょびしょに濡れてしまった。

上のようなことは起こりえると思いますか、
それとも、あり得ないと思いますか。

冷静に上の状況を考えてみると、
「つまづく」「転ぶ」「カバンから財布が飛び出る」
「道路に水たまりがある」「財布が落ちたところがちょうど水たまり」
「お札が濡れるような落ち方をした」
という事象が重なったかなり特殊な状況です。

仮に、上の3つの事象が独立に30%で起きるとして、
全て同時に起こる確率は、0.07 % とかなり低い確率です。

通常、特殊な状況であればあるほど、
起こる確率は小さくなりますが、
そのような背景を無視して、
特殊な状況が起こりやすいのではと考えてしまいがちです。

ベースレートの無視(Base-rate neglect)

ベースレートの無視とは、
判断を行う際に基準とすべき、
一般的にはどうなのかの情報を無視してしまう傾向を指します。

例えば次のような状況を考えてみましょう。
病気Aの検査を行ったところ、陽性が出た。
検査が誤る(陰性を陽性と言う)確率は1%未満だと言われた。

この時、病気Aにかかっているのは確実なのでしょうか。

実は、病気Aが珍しい病気の場合は、
本当に病気Aにかかっていて陽性が出るよりも、
実は病気Aにかかっていなくて陽性が出る確率の方が高くなります。

ベイズの定理を思い出してみましょう。
陽性である時に、病気Aである確率は、
 P(A|陽) = \frac{P(A)P(陽|A)}{P(A)P(陽|A)+P(健康)P(陽|健康)}
 =\frac{1}{1 + \frac{P(健康)P(陽|健康)}{P(A)P(陽|A)}}
となります。

P(陽|健康)は陰性を陽性という確率なので、
検査が誤る確率なので、
これが低ければ、当然P(A|陽)は高くなります。

しかし、そもそも、ランダムに選んだ人が病気Aである確率P(A)が低い、
つまり、珍しい病気である場合、
P(A|陽)は低くなり、
陽性が出たとしても本当に病気Aである確率が低くなります。
これは意外に思われるのではないでしょうか。

このように、人は、陰性を陽性と言う確率P(陽|健康)で、
検査の精度を測りがちですが、
その病気がどのくらい珍しいのかP(A)を無視しがちになります。

サンプルサイズの無視(Insensitivity to sample size)

サンプルサイズの無視とは、
割合を示されたときに、
その背後にあるサンプル数を無視してしまう傾向を指します。

Aのサービスでは顧客満足度80%
Bのサービスでは顧客満足度90%
という広告があったとします。

これだけの情報ではBのサービスの方が優れているように思えますね。

ところが、
Aでは、1000人中800人が満足であると答えて、
Bでは、10人中9人が満足であると答えたとすると、
どうでしょうか。

Bが顧客満足度90%なのは、たまたまな可能性が高いですね。

出された平均の数値がどれだけ信頼できるものかは、
サンプル数に依存するにも関わらず、
そのサンプル数を無視して、
割合などの数値だけを見て判断してしまうというのが、
サンプルサイズの無視です。

利用可能性ヒューリスティック(Availability heuristic)

利用可能性ヒューリスティックとは、
記憶から取り出しやすい情報を基に判断する傾向のことを指します。

次のような経験はないでしょうか。
買い物をしにスーパーに来たけど、
あと一つ何を買おうとしていたけど思い出せない。
とりあえず、レジに並んでみよう。
レジ前の棚にガムがおいてある。
ガムも欲しいと言えば欲しいし買っておこう。

上の買い物を結果だけ見ると、
本当に欲しかったものは思い出せず買えずじまいで、
もともと買うつもりのなかったガムを買っています。

とりあえず、頭に浮かんだものは重視するけど、
中々思い出せないものは軽視してしまうのが、
利用可能性ヒューリスティックです。

もちろん、いつまでも思い出せないもののことを考えて、 永遠と時間が過ぎるよりは、ある程度の割り切りも必要ですが、
思い出せない部分にも重要な何かが隠れているかもしれません。

真実性の錯覚(Illusory truth effect)

真実性の錯覚とは、
ある誤った事実が繰り返し伝えられることで、
真実であるように錯覚することを指します。

最近だと、twitter などのソーシャルネットワーク上で、
デマが拡散され、何度も同じような情報を繰り返し目にすることで、
まるで、真実であるように捉えられてしまうことも少なくありません。

情報は、それをよく見かけるから正しいと思うのではなく、
どこが、あるいは、誰が出した情報だから正しいなど、
頻度だけで判断しないようにしたいものです。

単純接触効果(Mere exposure effect)

単純接触効果とは、
繰り返し接することで好意や印象が強くなるという効果です。

パーティー会場に行った際、
全く知らない人よりも、
見知った人で集まって話してしまいがちですよね。

一度もあったことのない人よりも、
何度か会っている人を好意的に感じてしまうのです。

確証バイアス(Confirmation bias)

確証バイアスとは、
自分の信じている情報に近いものばかりを集め、
より自分の信念を強固にしていく傾向を指します。

人は、自分で自分を否定するのを嫌い、
自分を否定する情報をシャットアウトし、
自分を肯定する情報ばかりに目を向けようとします。

例えば、「食べるダイエット」などは、
痩せたいけど食べるのを我慢できない自分を肯定してくれるので、
非常に魅力的に映るでしょう。

最近のソーシャルネットワークの発展も、
この確証バイアスに拍車をかける可能性があります。

ソーシャルネットワークの特徴として、
これまで、少数派で、地理的にも離れて点在していた人たちでも、
簡単にネット上でコミュニティを形成できるようになったことが挙げられます。

これは、今まで交流の難しかった潜在的なコミュニティが新たに顕在化するという意味で、
非常に重要な特徴ではありますが、
フォロワーが自分と似たような人ばかりになり、
自分と似たような意見ばかりが偏った結果、
本当は違っているのに、自分は正しいと思い込みを強くする可能性もあります。

再認ヒューリスティック(Recognition heuristic)

再認ヒューリスティックとは、
聞いたことのあるものを高く評価する傾向のことを指します。

例えば、全く聞いたことのない都市と、
アテネなどの良く耳にする都市のどちらが人口が多いかと聞かれると、
聞いたことのあるアテネは人口もそれなりに多いだろうと感じてしまいます。

ところが、実はアテネの人口はかなり少ない方になるので、
案外、耳にしたことのない都市の方が人口が多いことがあります。

このように、知ってるから、大きい都市なんだろうというのは、
典型的な再認ヒューリスティックと言えます。

確実性効果(Certainty effect)

人は曖昧なものよりも確実なものを好みます。
このような傾向を確実性効果と言います。

典型的な例は、

  • 1万円もらう
  • コインを投げて表なら2万円、裏なら何もなし

の2択を選ぶ場合に、前者の確実に1万円をもらう方を選ぶ人が多いことが挙げられます。

実際には、得られる期待値が同じであっても、
確実性の高い方を好む傾向があるということです。

下の過去の記事でも、この確実性効果の別の例を紹介しています。

clean-copy-of-onenote.hatenablog.com

条件確率の誤謬(conditional probability fallacy)

条件付き確率の誤謬とは、
Aが起こった時のBの確率と、
Bが起こった時のAの確率を同じものとしてしまう傾向を指します。

例えば、ガンの検査をして陽性が出たとします。
その検査は、本当にガンならほぼ100% 陽性が出るものだと医師から伝えられました。
では、検査の結果として、ガンだと言えるのでしょうか。

別の例だとどうでしょう。
A店で万引きが発生したらしく、
「その日にA店にいたという理由で逮捕された」
警察が言うには「犯人なら100%その日にA店にいたはずだ」とのこと。

2つめの例だと明らかにおかしいのは分かりますね。

ところが、どちらも同じ構造になっています。

上の例では、「ガンなら100%陽性」です。
下の例では、「犯人なら100%店内にいた」です。

そして、問題となるのは、
「陽性ならガンか?」
「店内にいたなら犯人か?」
ということです。

問題は同じにも関わらず、
1つめの例では思わず間違って判断してしまいそうですね。

このように、気づかないところで、
確率を誤って判断している可能性があると思うと、
注意が必要ですね。

ネガティビティバイアス(Negativity bias)

ネガティビティバイアスとは、
ネガティブな情報に目が向いてしまう傾向を指します。

人に怒られたとき、
それまで、どれだけ褒められていても、
大きくへこみますよね。

また、次の二つを選んでくださいと言われたとき、

  • 何もしない
  • コインの裏が出ると1万円取られる代わりに、表が出ると1万5千円もらえる

なんとなく、上の何もしないを選びそうですよね。
期待値的には下の方が得ですが、
コインの裏が出た時に、損をするのが嫌で、
避けてしまうのではないでしょうか。

初頭効果(Primacy Effect)

第一印象が重要と言われるのは、
この初頭効果のためです。

初頭効果とは、最初に与えた情報が、
その後の情報に影響を与えるというものです。

初対面で印象がいいと、
その後の失敗も「たまにはあるか」で済まされるのに対して、
初対面の印象が悪いと、
その後の失敗で「やっぱりか」となるのは、
分かっていても起こりえることですね。

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