クイックノート

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絶対値乗の総和

総和を計算する和の公式は高校数学で学びますが、
ちょっと変わった和の計算をしてみましょう。

等比数列  a^0, a^1, a^2, \cdotsに近いのですが、
累乗の部分が二つの変数n,mの差の絶対値で表されていて、
丁度、次の表の全部を足し合わせるような計算を考えます。

n \ m 1 2 3
1 a^{|1-1|} a^{|1-2|} a^{|1-3|}
2 a^{|2-1|} a^{|2-2|} a^{|2-3|}
3 a^{|3-1|} a^{|3-2|} a^{|3-3|}

問題

上の計算をきちんと式で表すと次のような総和の計算になります。

\sum_{n=1}^{l} \sum_{m=1}^{l} a^{|n-m|}

l は総和の範囲をしていしていて、上の表の場合は、
l=3 になります。

解法のアイデア

そのままの式だと、計算が難しそうなので、
知っている形に変形できないかを考えます。

この計算では絶対値が厄介ですが、
絶対値は必ずなにかしらの整数kの値をとります。
その時、a^{|n-m|} = a^kとただの累乗になるので、
|n-m| =k の値によって分けると良さそうな気がします。

実際、 |n-m|=0となるのは、n=ml通り、
|n-m|=1となるのは、n=m+1またはm=n+12(l-1)通り
同様に、|n-m|=k (0 \lt k \lt l)となるのは、2(l-k)通りになります。 ただし、|n-m|=0は場合の数が少し特殊であることに注意しましょう。

つまり、最初の表の中身をa^{|n-m|}の値毎にリストアップすると

個数
a^0 l
a^1 2(l-1)
a^2 2(l-2)
... ...

となり、これを全部足し合わせればよいことが分かります。

そのため、求める総和の式は次のように変形できます。

\sum_{n=1}^{l} \sum_{m=1}^{l} a^{|n-m|} = l a^0 + 2(l-1) a^1 + 2(l-2) a^2 + \cdots

これで、式の中から絶対値が消えたので、
計算を進めることができそうです。

知ってる総和の形に

後は、計算を進めていくだけですが、
その時のポイントは、
「知ってる総和の形に変形して、 総和の公式を利用する」です。

a^0だけは他と少し違うので、
その部分だけ分けて、kについて総和をまとめると \sum_{n=1}^{l} \sum_{m=1}^{l} a^{|n-m|} = la^{0} + \sum_{k=1}^{l} 2(l-k)a^k \\
 = l + 2l\sum_{k=1}^l a^k - 2\sum_{k=1}^l ka^k
となります。

このように、等比数列の和 \sum_{k=1}^l a^kと、
等差×等比数列の和\sum_{k=1}^l ka^k
計算すればよいということが分かりました。

計算

後は、次の総和の結果を利用すれば、計算完了です。
\sum_{k=1}^l a^k = a\frac{1-a^l}{1-a}
\sum_{k=1}^l k a^k = \frac{a(1-a^l)}{(1-a)^2} - \frac{la^{l+1}}{1-a}

上を使って、式を整理すると、
\sum_{n=1}^{l} \sum_{m=1}^{l} a^{|n-m|} = \frac{1+a}{1-a}l - \frac{2a(1-a^l)}{(1-a)^2}
となります。

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