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とりあえずの通告・一時保護が虐待の見逃しを招く

最近の虐待関連のニュースを頻繁に目にするようになり、
政府も虐待防止に向けて政策を練っているようです。

悲惨な虐待事件を防ぐためには、
とりあえず、虐待の疑いがある人を通告して、
子どもを一時保護してしまえば良いのではないかと、
考える人もいるでしょう。

ところが、このような安直な考えで一時保護を行うと、
逆に、悲惨な虐待に対応できず、
見逃しが生じる可能性があるのです。

ここでは、その理由について説明します。

確証のない一時保護

一時保護は、すでに確証のない段階で実施されています。

虐待の疑いがあるというのが、
一時保護の理由として認められているのです。

疑いレベルで良いので、
近所の人から通告があったとか、
医者から通告があったとか、
とりあえず、疑いレベルで何でも一時保護ができてしまうのです。

そして、一時保護の理由には「養育環境の調査のため」のように、
それなりの時間をかけて調査を行い、
虐待の有無の判断、以降の支援方法を決定するのです。

多段階の検知器

上の確証のない段階での一時保護は、
システム的に考えると、
スクリーニング付きの多段階の検知器に似ています。

医療分野でもよくあるものですが、
異なる種類の検知方法があったとき、
簡便なものを最初に行い、
検査に引っかかったものについて、
詳細な検査を後で行う検知方法です。

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スクリーニングを、医者などの通告として、
詳細な検査の部分を、児相による調査とすれば、
うまく対応しているように見えますね。

詳細な検査は時間や費用がかかったり、
数をこなせないことが多く、
出来るだけ、検査の対象を絞りたいという要求があります。

一方で、簡便な検査であるスクリーニングでは、
なるべく取りこぼしは少ないことが望まれます。

とはいえ、スクリーニングで取りこぼしを減らそうとした余り、
検査対象が絞れなくなってしまっては、
詳細な検査がキャパオーバーになり、
全体的なシステムとして破綻する可能性も秘めています。

そのため、スクリーニングにも、
ある程度の対象を絞れる程度の精度が必要となるのです。

過剰な一時保護は児相のリソースを奪う

上で説明したように、スクリーニングの箇所が、
何でも通すようなものであると、
詳細な検査のキャパオーバーを招きます。

とりあえず通告・一時保護という考えが蔓延すると、
児童相談所が抱え込む案件が急増し、
1件1件に対して丁寧に対応することが不可能になります。

すでに、児童福祉司の数が、
児相の抱える案件の数に追いついていないことが指摘されていますが、
この状況で、一時保護を増やそうというのは、
児相の1件あたりの対応力を減らすことにしかならないのです。

忙しいと安易な案件に向かいがち

やることが多く山積みの状況になると、
とりあえず簡単なタスクをこなして、
自分を納得させることってないでしょうか。

結局、児童相談所もこのような状況に陥っているのでしょう。

誤通告・誤一時保護が多い中、
児童相談所は扱いやすい案件をこなし、
数をこなしていると納得しようとするでしょう。

扱う案件が少なければ、心の余裕も生まれて、
ハードな案件にも取り組もうという気力が出るものです。

常に忙しく、余裕がなければ、
実は虐待もなく、付き合いやすい家庭との案件に手をつけたい、
と思うでしょう。

まとめ

通告や一時保護を増やすことが、
児相のキャパオーバーを招き、
重大案件の見逃しを起こす理由についてまとめました。

通告者にはそれが誤通告であっても法的に責任に問われないことから、
誤通告は後を絶ちません。

そんな中で、限られた人員で、
通告の真偽に依らず案件に当たる児童相談所では、
もはや重大な虐待案件を見逃すのは避けられないのではないでしょうか。

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