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ベン図で読み解く「揺さぶられっ子症候群」の異常さ

赤ちゃんの頭を激しく揺さぶることで生じるとされている
揺さぶられっ子症候群ですが、
これが虐待判定に利用されているという事実を知る人は、
まだまだ少ないかもしれません。

また、揺さぶられっ子症候群の診断基準が非常に甘く、
他の原因でもありうる症状から、
とりあえず揺さぶられっ子症候群を診断し、
虐待というラベルを付けることが行われているなんて、
多くの人は、知らないことでしょう。

医療という高度に専門的で分かりづらいことも、
この問題の認知度を下げている要因です。

そこで、今回は、一目でその異常さがわかるように、
揺さぶられっ子症候群がどのように虐待の冤罪を生み出すかを、
ベン図を使って説明してみることとします。

揺さぶられっ子症候群とは

揺さぶられっ子症候群とは、
「頭を激しく揺さぶられた赤ちゃん」が、
頭の中の出血などの症状を発症することを言います。

症状として典型的なのは、
次の三兆候と呼ばれる三つの症状です。
- 硬膜下血腫
- 眼底出血
- 脳浮腫
いきなり、難しい言葉が出てきましたが、
それぞれ、頭の中が出血したり、目の中が出血したり、
脳が腫れたりする症状を指しています。

以上をまとめると、揺さぶられっ子症候群とは、
「頭を激しく揺さぶられた」ことと、
それに伴って「三兆候が現れる」ものが、
典型的な症例となります。

ベン図で表すと下のようになります。
揺さぶられた子の中で、三兆候を生じた子、
つまり二つの集合の共通集合が、
揺さぶられっ子症候群(SBS:Shaken Baby Syndrome)となります。

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三兆候のそれぞれは揺さぶり以外でも生じ得ますし、
たとえ強く揺さぶったからと言っていつでも症状が現れるとも限りません。
どんな時でも例外があり得ます。

激しい揺さぶりと三兆候が重なって、
初めて揺さぶられっ子症候群となるのです。

異常な診断

では、医者はどのようにして、
揺さぶられっ子症候群を診断するのでしょうか。

実は、この診断に大きな問題があるのです。

医者は、患者の症状を見て、
対応する治療を行うのが仕事です。

その際に、とりあえずの診断名を付けるというのは、
よく行われていることです。

例えば、お腹を下したと言って内科に診察してもらうと、
本来は細菌性かウイルス性かの鑑別に検査が必要ですが、
検査なしに、とりあえずで、ウイルス性腸炎と診断されることがあります。

医者の診断とは案外いい加減なものなのです。

揺さぶられっ子症候群でも、その例にもれず、
「激しい揺さぶり」があったかどうかは、
揺さぶられっ子症候群か否かの鑑別に置いて、
非常に重要ですが、
三兆候のみで「揺さぶられっ子症候群」を診断する医者が多くいます。

ベン図で書くと、下のような図になります。
上で述べたように本当の揺さぶられっ子症候群は共通集合ですが、
医者は、三兆候を見て、揺さぶられっ子症候群と診断します。

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図を見ればわかる通り、揺さぶっていないにも関わらず、
三兆候が生じた場合であっても、
医者は揺さぶったと診断するのです。

医者の意見で冤罪が作られる

医者が雑に「ウイルス性腸炎」を診断するのは、
大した問題ではないでしょう。

一方で、雑に「揺さぶられっ子症候群」を診断すると、
極めて恐ろしいことが起きます。

医者は三兆候しか見ていないにも関わらず、
「激しく揺さぶった」との診断を下しているのです。

すると、「医者が激しく揺さぶったと言っているのだから」と、
児相や警察は虐待事件として扱います。

もちろん、そこには真の虐待事件も含まれるのですが、
一方で、虐待以外で三兆候が生じた場合であっても、
虐待として扱われるのです。

何よりひどいのは、裁判所ですら、
医者の意見に判断を左右されるということです。

本来、三兆候とは独立に揺さぶりの有無を検討すべきです。
「揺さぶった」と診断している医者は、
揺さぶりの有無ではなく、三兆候の有無のみを報告しているに過ぎません。
にも関わらず、「医者が揺さぶったというのだから」と、
たとえ揺さぶりが無実だとしても、揺さぶったという前提のもとで、
判決が下されることもあるのです。

これにより、生み出されている冤罪は決して少なくないでしょう。

まとめ

揺さぶられっ子症候群は、
激しく揺さぶられたことの事実と、
三兆候を生じたことの共通集合として定義されます。

一方で、医者は、三兆候のみで揺さぶられっ子症候群を診断します。

本来であれば、「激しく揺さぶられた」事実を確認すべきところですが、
「医者が診断したから」と、揺さぶりの事実を確認せずに、
冤罪が生み出されることが少なくありません。

「医者が言うから」ではなく、
医者の診断の意味を正しく理解した上で、
診断とは独立に「揺さぶりの事実」を検討する真摯な姿勢を、
児相、警察、裁判所は持つ必要があるでしょう。

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