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児童相談所が警察よりも「強い」理由

連日のように児童虐待関連のニュースを目にするようになりました。

このようなマスメディアの煽りをうけて、
与党も法律の改正に向かおうとしているようです。

よく議論に上がるのは、児童相談所の権限が弱いから強くしよう、
そうすれば虐待も減らせるでしょというものです。

ところで、児童相談所の権限は本当に弱いのでしょうか?

実は、決してそんなことはなく、
むしろ、非常に強力な権限を有しています。

それは、厚労省の「一時保護」に関する記載にも堂々と記載されています。

非常に強力な行政権限
このような強力な行政権限を認めた制度は、諸外国の虐待に関する制度としても珍しく、
日本にも類似の制度は見当たらない

第5章 一時保護|厚生労働省

さて、それでは、具体的にこの児童相談所に認められた一時保護が、
どれだけ強力な権限であるかを見ていきましょう。

一時保護とは

そもそも、一時保護とはなんでしょうか。

簡単に言ってしまえば、子どもを保護者から切り離し、
子どもの安全確保や、保護者への指導を通して問題の解決を図るものです。

典型的には、虐待を受けている子どもを、
保護者から離すことで、虐待を受ける危険を防ぎつつ、
保護者に然るべき対応を取るという形になります。

ただし、虐待を受けているかどうかの判断は非常に困難になります。
一般に、家庭という閉じた空間で行われる虐待を、
児童相談所だけで発見するのはほぼ不可能でしょう。

そこで、虐待の発見には通告制度をとっています。

つまり、虐待を疑った人が児童相談所に通告を行うことで、
児童相談所は一時保護をすべきかどうかの判断を下すというものです。

疑わしくは保護

「疑わしきは罰せず」とは刑事事件の基本で、
無実の者が無実を証明する必要はなく、
有罪の証拠により犯罪が確実となって初めて、
罪に問われるというものです。

やってないことの証明は原理的に困難になるので、
被疑者が極端に不利にならないように、
疑われただけではなく、確実な証拠が揃って初めて、
罰するようにするという基本中の基本ですね。

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ところが、一時保護の場合は、
この証拠が必要とされません。

なぜなら、下記の厚労省の文言の通り、裁判所を通さず、
児童相談所の完全な独断で一時保護を決行できるからです。

関係者の意思に反して行う強制的な制度は、通常は裁判所の判断を必要とするが、
児童福祉法の一時保護については裁判所の事前事後の許可も不要である

有罪・無罪以前に逮捕についても考えてみましょう、
現行犯でない限り逮捕には、
裁判所の令状が必要ですが、
やはり児童相談所の一時保護では必要ありません。

つまり、虐待の疑いがあるという通告一本のみで、
児童相談所は一時保護を決めてしまうことができるのです。

また、通告者は通告に誤りがあったとしても、
特に罰則があるわけでもありません。
そのため、通告者本人が弱い疑いしか持っていなくとも、
その通告をもとに一時保護が決行されることも十分あります。

これが、児童相談所の権限が強力であるとされる一つの理由です。

子どもは人質

児童相談所は、一時保護により子どもを確保した後は、
保護者との面談等による対応を行うことになります。

虐待の証拠がなく、疑いレベルで一時保護した場合には、
保護者の虐待の調査を警察とも連携しつつ行うことになります。

ここで、普通の警察の取り調べと大きくことなるのは、
子どもという人質が一時保護という形でとられていることです。

先ほども述べたように一時保護は児童相談所の独断で決定されます。
そして、その解除や面会制限、後で述べる延長についても、
児童相談所が強い決定権を持っています。

つまり、児童相談所の心象一つで、
子どもをどうとでもできるという状態で、
保護者との面談が行われるわけです。

まさしく、子どもを人質に取った上での
取り調べが行われるわけです。

通常、警察の取り調べで、強迫が行われれば、
違法行為であり、その自白による証拠も効力をなくしますが、
この一時保護は例外として、合法的な強迫の手段として使われることになります。

際限のない延長

一時保護は原則2カ月と定められていますが、
延長が認められています。

実際には、延長の上限が定められているわけでもなく、
延長を判断する明確な基準も定められているわけでもないので、
際限なく延長できてしまうというものになっています。

ずるずると何年もの間、子どもを人質に取られ続け、
その間に取り調べが行われるのです。

これでは、容易に冤罪が生じることが予想できますね。

一時保護は罰にもなり得る

さて、どんどん一時保護をすれば良いという人の中には、
「一時保護は別に刑罰ではないからいいじゃないか、
冤罪なら嘘の自白しなければ不当に罰せられることもないじゃないか」
という人がいます。

ところが、一時保護を受けた時点で、
罰則にも匹敵し得ることは見逃されがちのようです。

親子分離の損失

まず、第一に、親子分離による損失は計り知れません。
一時保護を受け、面会を謝絶されてしまえば、
親子の間に完全な空白の期間が作られます。

本来であれば、親子の思い出を作るはずの期間が、
真っ白に塗りつぶされます。

後で子供が返ってきたとしても、
この空白の期間は取り戻すことができないのです。

施設利用費の徴収

一時保護は基本的に全て公費で行われることになっていますが、
施設が預かるような場合は、保護者の年収に応じてその費用を負担させられます。

これはもはや罰金を徴収されているのと同じようなもので、
裁判所も通さず、児童相談所の独断で、
保護者から施設費用という形で資金の徴収が行われます。

証拠も不要、裁判所に通すことも不要で、
資金の徴収を決定できる児童相談所はまさに最強の行政機関でしょう。

余分費用の損失

普通の刑事事件とは異なり、
子どもを人質にとられ、
悪魔の証明を求められる虐待冤罪では、
専門性の高い弁護士をつけることはほぼ必須と言えるでしょう。

当然、弁護士費用は自己負担となるので、
本来は必要とならなかったはずの巨額の出費がかかります。

まとめ

何をどう間違ったら、
ここまで破滅的なシステムが構築できるのか不思議でなりませんが、
児童相談所には、非常に強力な権限が与えられていることがわかります。

実際、厚労省もこの異常性は自覚しているようで、
一時保護の文言にも、異常性を認める旨が記載されているほどです。

虐待を防ぐことが重要なのは、もちろん分かりますが、
このような危ういシステムは確実に見直しが必要となるでしょう。

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