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揺さぶられっ子症候群診断アルゴリズムが破綻する【岡山県保育園乳児転落事故】

2019年4月19日に、
保育園で乳児が転落するという事故がありました。

www3.nhk.or.jp

このニュースをみて、
「保育士というプロでも、こんなミスが起こるのか」
「うちもおんぶ紐でおんぶしてるから気をつけないと」
など、様々な感想が浮かびますが、
このニュースはより重要な意味が隠されています。

それは、今日の虐待冤罪の温床となっている
揺さぶられっ子症候群の診断を行う根拠を、
大きく揺るがす事例であるということです。

揺さぶられっ子症候群を利用して、
真偽を問わず虐待の診断を行う根拠として、
3メートル以上の落下でなければ硬膜下血腫は起きない」
というものがあります。

親がどんなに「子どもが転倒した」「ベッドから落ちた」と説明しても、
「3メートルの落下じゃないから、親は嘘をついている」
として、虐待判定をするのです。

ところが、今回のおんぶ中の転落事故は、
明らかに3メートルよりもはるかに低い落下にも関わらず、
硬膜下血腫を生じています。

この事実は、長年の間、
間違った医学知識を元に、
潔白の親たちを虐待親と糾弾してきた、
ドクターハラストメントを浮き彫りにするものとなるでしょう。

揺さぶられっ子症候群の診断

揺さぶられっ子症候群の診断は、
典型的には(硬膜下血腫、眼底出血、脳浮腫)の三兆候が揃うと、
自動的に揺さぶられっ子症候群と診断するという方針がよく取られています。

ただし、三兆候が揃わなくても、
虐待であるとして児相や警察に通告する医者もいます。

そんな医者による虐待冤罪をかけられた被害者で、
典型的に見られるのは「硬膜下出血」を虐待と見なされたというものです。

硬膜下血腫は頭蓋骨よりも内側にある硬膜と呼ばれる膜の下で、
血だまりができている状況をさします。

では、この硬膜下血腫があるとなぜ虐待だと言われてしまうのでしょうか。

3メートル以上の落下がないと硬膜下血腫は起きない

非常に奇妙なことに、
硬膜下血腫は「3メートル以上の落下がないと起きない」というのが、
虐待専門家を自称する医者たちの間で通説となっています。

実際、そのような自称専門家らの意見を取り入れて作成された
厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」の中には、

出血傾向がない乳幼児の硬膜下血腫は3メートル以上からの転落
交通外傷でなければ起きることは非常に稀である。
したがって、そのような既往がなければ、
まず虐待を考える必要がある

とされています。

出血傾向とは、血が止まらないなどの体質のことをさします。
つまり、一般的な乳幼児に硬膜下血腫があれば、
それは3m以上の落下、交通事故、虐待だというのです。

そして、3m以上の落下、交通事故でなければ、
まず虐待を考えろというのです。

一般人の感覚からすると、
「頭の打ち所が悪かったら起きることもあるのでは」
と思うのですが、
虐待の専門家らはそれをあり得ないと頭から否定してくるのです。

今回の事故の場合は?

それでは、今回保育園で起きた乳児の転落事故はどうでしょうか。

ニュースの文面には「およそ1メートル下の畳の上に落ちました」とあります。

この時点で、虐待の専門家らが盲信している
「3メートル」よりもはるかに低い高さの落下に当たります。

また、この保育士は他の子どもの対応をするために、
前屈みになったところ、肩口から落下してしまったと述べているようです。

前屈みになって肩口から落下するということは、
前方に傾斜がつくような状態にあったと言えます。

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ということは、上図のように、
腰よりも低い位置に頭がきているはずですね。

そうすると、かなり足が長くないと1mには到底満たないはずなので、
実際にはより低い位置からの落下でしょう。

それこそ虐待専門家が頭ごなしに否定してきた
「ベッドからの落下」や「つかまり立ちからの転倒」
と同程度の落下による硬膜下出血であると言えます。

保育士はどうなるのか

全く同じ事故が家庭内で生じた場合、
両親がいくら「ベッドから落ちた」
「抱っこ中に落ちた」と説明しても、
「3メートル以上の落下でしか硬膜下出血は起きない。
 両親は嘘をついており虐待を疑う他ない」
として、警察に通報されることが通例化しています。

すると今回の事故に関しても、
たとえおんぶ中に転落したというのが本当であっても、
「虐待を疑うしかない」というのが、
これまでの虐待専門家の考えになるのでしょうか。

そうなれば、警察によって保育園や保育士宅の家宅捜索や、
執拗な聴取を受け、最悪、逮捕・起訴されることも、
これまでの例から考えるとあり得ます。

ですが、今回は家庭内ではなく、保育園内であり、
目撃者がいる可能性が高いです。
家庭内では目撃者がいないことをいいことに、
虐待を決めつけた診断や捜査が進められてきました。

目撃者がいれば、このような冤罪の被害は回避できるでしょう。
もしかすると、冤罪の矛先は保育士ではなく、
乳児の親に向かう可能性もあるのが怖いところですが。。。

まとめ

今回、「3メートル以上の落下以外では硬膜下血腫は起きない」
という虐待専門家が好んで使うフレーズを否定する事故が起きました。

これまで何人の親たち、そして子供達が、
この「3メートル以上」という迷信に苦しめられてきたことでしょう。

当事者の親は子どもがベッドなどの低いところから落ち、
その結果、硬膜化血腫が生じたことを知っています。
そして、何度も医者・警察・児相に説明をしてきました。

ところが、「そんなことはあり得ない。嘘をついている」と、
一方的に決めつけられて、事実が隠蔽されてきたのです。

今回は場所が保育園ということもあり、
目撃者がいる可能性も高く、
この迷信を真っ向から否定する大きな事例となり得ます。

幸いにも、事故にあった乳児に命に別状はないとのことでよかったですが、
保育士や保護者に冤罪の火の粉が降りかからないことを祈りたいですね。

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