うさぎを飼っている人なら目撃された方も多いと思いますが、
うさぎは自分の糞を食べます。
うさぎの糞には柔らかい糞と硬い糞の二種類があり、
食べるのは主に柔らかい糞の方です。
この柔らかい糞にはうさぎにとっての栄養が豊富にあり、
うさぎにとっては重要な栄養源となっています。
一方で、硬い糞の方は対して栄養は少ないと言われています。
でも、硬い糞の方も、食べている様子が見られます。
では、なぜうさぎは、栄養のない硬い糞まで食べるのでしょうか。
この疑問について、
論文ベースで調べてみました。
硬い糞の研究は意外と最近になってから始まった
まず、意外なことですが、
研究上では、うさぎが硬い糞を食べることが明らかになったのが、
下の1993年の論文になります。
[1] ウサギの食糞行動 ―ウサギは硬糞 も摂取する―, 1993
それ以前は、うさぎが食べる糞は全て柔らかい糞というのが通説で、
硬い糞は栄養もないので食べないという風に思われていたようです。
うさぎを飼っている人の間では、ほぼ常識とも思える
「うさぎが硬い糞も食べる」という事実の発見が、
論文になっていて、
しかもそれが1993年という結構最近であるということに、
驚きですね。
こういうのを見ると、
小学生の自由研究でも案外知られていない
大発見があるかもしれないという気がしてきます。
何故硬い糞の研究が遅れたか
ウサギを飼っている身としては、
硬い糞を食べることはほぼ日常的に行われているのに、
どうして、研究上では見逃されてきたのだろうというのが、
疑問にあがります。
その疑問については、以下の文献で考察されていました。
[2] ウサギ類の糞食, 1995
文献[2]で理由として挙げられていたのは、
- 観察がきわめて稀
- 糞そのものは見れない
ということでした。
観察がきわめて稀
観察例としては、いくつかの研究であったようですが、
その観察例のほとんどが断片的なものでした。
確かに、ペットとしてずっと一緒に過ごしていれば、
それなりの回数遭遇するかもですが、
研究で観察となると、そこまで多くないのかもしれません。
糞そのものは見れない
当然、うさぎが口に入れて食べてしまうので、
食べられた糞を見ることはできません。
また、うさぎが糞を食べる時の様子を知っている人なら、
おしりから直接、糞をとって食べるので、
食べている途中で糞をみることができないのも分かりますね。
とはいえ、うさぎを飼っている人からすれば、
明らかにかじられた硬い糞が転がっているのを見つけることもあるので、
糞が見れないという理由は少し疑問ですね。
何故硬い糞を食べるのか
硬い糞は栄養に乏しいと言われていますが、
うさぎは何故、これを食べるのでしょうか。
文献[2] ではいくつかの理由が提示されています。
- 食物の利用効率を上げる
- 休息場の衛生を維持する
- 飢えの回避
食物の利用効率を上げる
始めに浮かぶのがこの理由で、
摂取した食物を再度消化器に通して、
食物の利用効率を上げる働きがあるのではということです。
例え、柔らかい糞ほどの栄養はないにしても、
何もせずに捨ててしまうよりはマシということですね。
休息場の衛生を維持する
こちらは、文献[2]自身でも否定的で、
ウサギは、休息場を繰り返し利用することが少ないため、
衛生を維持する必要があまりないと言われています。
飢えの回避
餌がえられない時に、うさぎが硬い糞を食べるということが、
下の文献でも観察されています。
[3] 絶食時におけるノウサギの糞食について, 1997
文献[3]では、絶食中のうさぎを観察して、
確かに、うさぎが硬い糞を食べていることを確認しています。
このように、飢えを回避する目的として、
硬い糞を食べるという行動を取ることがあるようです。
とはいえ、家で飼っているうさぎは、
餌が近くにあっても、硬い糞を食べていることもあるので、
必ずしも、飢えの回避のためだけに硬い糞を食べるわけではなさそうに思います。
まとめ
うさぎが自分の硬い糞を食べる行動について、
論文ベースで調べてみました。
意外なのは、硬い糞を食べるという事実が研究上で明らかになったのは、
かなり最近の話だということです。
案外、自分のペットの観察の方が、研究者の研究を上回るかもしれませんね。