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量子鍵配送【量子暗号の肝】

量子は不思議な振る舞いをすることで有名です。
不思議な性質を使うと、普通では考えられないことができます。

例えば、絶対に破れない暗号なんてものが作れてしまいます。

これは量子暗号と呼ばれるものですが、
実は、破れない暗号は量子じゃなくてもできます。

ただ、その暗号を実用的なものにするためには、
盗聴者を発見できることが必要となってきます。

量子の性質は、この盗聴者の発見に使われます。

この記事では、どのようにして、盗聴者を発見できるのか、
そして、盗聴者を発見できることが破れない暗号にどうつながるのかを見ながら、
量子暗号の肝である量子鍵配送と呼ばれる技術についてまとめます。

盗聴者の発見

量子には観測されると状態が変化する
という性質があります。

そのため、途中で量子を盗み見すると、
送ったものとは違う量子が到着することになります。

簡単に言ってしまえば、これが盗聴者の発見に使えるのです。

つまり、量子を送ってみて、
送ったものと違う量子が届いたら、
盗聴者がいるぞと分かります。

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盗聴者は盗聴を隠そうとする?

ところが、話はもう少し複雑です。
量子を盗み見した人は、
盗聴がばれないように、
盗聴前の量子にすり替えてしまうかもしれません。

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ところが、これは、上手く行きません。
量子には、量子を観測しても元の状態は確率的にしか分からない
という性質があります。

そのため、盗聴した人が元の量子にすり替えるという戦術は、
成功したり失敗したりするので、
何度か量子を送ってみれば、うまくすり替えが出来ない量子が出てきて、
盗聴がばれてしまうのです。

絶対に破れない暗号

上のように、量子を送り出して通信をすると、
盗聴されているかどうかを判断することができます。

では、量子を使ってそのまま情報を送れば安全でしょうか?
当然、答えはノーですよね。

盗聴が分かるというのは画期的ですが、
大事なパスワードを送って、
それが盗聴されたと分かっても、
時すでに遅しで、パスワードが流出してしまったことには変わりありません。

では、どうすればよいのでしょうか。

ダミー情報を送る?

初めに思いつくのは、盗聴されてもいいダミー情報を送ってみて、
盗聴されていないと分かったら本当の情報を送るという方法ではないでしょうか。

ところが、この方法には大きな問題があります。

それは、ダミー情報を送っている時は、たまたま盗聴していなかったけど、
本当の情報を送り初めてから、盗聴が始まった場合に、
盗聴を防げないということです。

ダミー情報を送るというのは、かなりいい線まで言っていますが、
単にダミー情報を盗聴なしで送れたというだけでは、足りないのです。

暗号の解読方法(鍵)を送る

それでは、ダミー情報の代わりに、暗号の解読方法を送るのはどうでしょうか。

これは、暗号の鍵と呼ばれるもので、
「文字を1文字ずらす」という暗号の「1文字」であったり、
「'き'を'さ'」に変えるという文字の対応であったりを指しています。

暗号の鍵がばれてしまうと、暗号文は盗聴者にも解読されてしまいますが、
暗号の鍵を送った時点で盗聴されたことが分かれば、
別の暗号の鍵に変えて、再びチャレンジすることができます。

つまり、量子の性質を使うことで、
暗号の鍵を盗聴者は知らないという状況をつくることができ、
その後に、その方法で暗号化した情報を送ることができます。

暗号の鍵自体は、送ろうとしている情報は含まれていないので、
鍵だけ盗聴されたとしても、情報は流出していません

最強の暗号

後は、暗号の鍵を知らない盗聴者が解読できないような、
最強の暗号を使えば、絶対に破れない暗号の完成です。

暗号の鍵を知らなくても、解読できる暗号は多くあります。
たとえば、「そうきう」は、50音で1文字戻すと、「せいかい」です。
これは、暗号の鍵「1文字戻す」ということを知らなくても、
とりあえず1文字ずらしてみると意味のある文章になるので、
推測で解読できてしまいます。

せっかく暗号の鍵を盗聴されずに遅れるとしても、
暗号文だけから解読されてしまってはいけません。

どうすれば、解読できない暗号を作れるでしょうか。

先ほどの、文字をずらすという暗号を、
一文字一文字ずらす文字数を変えてみるとどうでしょうか。

つまり、
1文字目は2文字後ろに、
2文字目は3文字前に、
・・・
とするのです。

このようにすると、暗号のルールが非常に長くなりますが、
このルールを知っていないと、到底もとの文章は分かりそうにありません。

量子暗号では、このような非常に長い暗号鍵を使って、
鍵がないと解読不可能な暗号文で通信を行います

古典的な通信では、この長い暗号鍵をどうやって安全に相手に送るのかが問題になるのですが、
上でも述べたように、量子を使えば、盗聴されていない鍵を使えるので、
鍵の長さが問題にならないのです。

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