クイックノート

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代表を選ぶことによる多数決のゆがみ

日本の議会なんかがそうですが、
選挙で代表者を選んで、
代表者の多数票で議会での可決をするというように、
多数決の二段構えを取って意思決定を行うことが多いです。

気になるのは、普通に多数決を取った場合と、
二段構えの多数決を取った場合で、
結果にどのような違いが表れるのかということです。

そこで、シミュレーションベースで、
2段構えの多数決による選択の傾向を調べてみましょう。

代表による二段階の多数決

シミュレーションを行う前に、
二段階の多数決をモデル化してみましょう。

ここでは、
簡単のために、2択の議題について多数決で決定するとして、
賛成派と反対派がいるとします。

最も単純な、代表を選ばずに多数決を取るだけであれば、
賛成派と反対派のどちらが多いかで結果が決まります。

代表を選ぶ場合は、全体をどのように小グループに分けるか、
そして、別れたグループの中で代表をどう選ぶか、
選ばれた代表の中でどのように多数決を取るかでバリエーションが考えられます。

グループ分け

全体をm個のグループに分けて、
それぞれのグループから1人の代表者を選ぶとします。

このグループの別れ方によっては、
全体として多数派であっても、
グループの中では少数派に逆転されることがあり得ます。

今回は、グループ毎の人数も可変で完全にランダムにm個のグループに分けることにします。

グループ毎に人数が異なると、
少人数のグループほど多数派と少数派の逆転が起こりやすく、
これが最終的な決定に影響を与える可能性があります。

代表の選び方

グループの中で誰を代表として選ぶかは多数決で行います。
この時、自分の意見と同じ人を代表として選ぶのが自然だと考えられるので、
賛成派の人は、賛成派を選び、
反対派の人は、反対派を選ぶものとします。

そうすると、賛成派の多いグループの代表者は、賛成派の人、
反対派の多いグループの代表者は反対派の人になります。

ただし、人の選択はいつも同じ選択をするとは限らないので、
賛成の人でも、たまには反対をしてしまったり、
その逆があるような確率的な選択を行う場合もシミュレーションすることとします。

代表者の間での多数決

最終的な決定は代表者の多数決になるので、
代表者に選ばれた人がどのような決定をするかで結果は大きく変わります。

一番シンプルなのは、
賛成派によって選ばれた賛成派の代表者は賛成して、
反対派によって選ばれた反対派の代表者は反対するというものです。

しかし、上でも述べたように、人は必ずしも常に同じ選択をするとは限りません。

賛成派の代表者がふらっと反対に揺れてしまうこともあり得ます。
そこで、代表者についても、確率的な選択を行う場合についてのシミュレーションも行うことにします。

シミュレーション結果

代表者を選ぶことで二段階の多数決を行った時に、
どのように決定が変わってくるのかをシミュレーションで確認します。

代表者を選ぶとき、
代表者間で議決を行うときに、
それぞれ確率的に選択を行う場合と、
行わない場合が考えられます。

ここでは、

  • 代表を選ぶ時も、議決の時も決定的に行う
  • 代表を選ぶ時だけ確率的に行う
  • 代表を選ぶ時も、議決の時も確率的に行う

の3パターンに分けてシミュレーションしてみましょう。

ある程度拮抗している状況が面白そうなので、
全体として、賛成派が6割、否定派が4割であるとします。

決定的な代表者選出・議決

まずは、最も単純な多数決を考えましょう。
賛成派と否定派の多い方から代表者が選ばれて、
代表者の多数派によって議決されるというものです。

2段階の多数決を行わなければ、
多数派の賛成派の価値になりますが、
グループに分かれて代表を出すことになるので、
その別れ方によっては逆転する可能性があります。

下のグラフはグループの数を変えながら、
ランダムなグループ分けを複数回行った際に、
賛成で議決される確率を表しています。

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代表を通さなければ、100%賛成が選ばれる状況ですが、
代表を通した二段階の多数決にすることで、
多数派ではない選択が行われる可能性があることが分かります。

特にグループを3つに分けた場合に逆の選択を行う確率が高くなっています。
グループが3つだと、少数派が固まったグループが2つできると、
逆の選択が行われます。

グループが増えていくと、小数派の代表者が少し混ざったとしても、
多数派に負けやすくなるので、賛成が選ばれる確率は徐々に回復していきます。

確率的な代表者選出・決定的な議決

続いて、代表を決める時に時々逆の投票をしてしまう場合です。
今回は、6割で自分と同じ派閥に投票して、
4割で逆の派閥に投票する場合を考えます。
つまり、みんなが優柔不断な状況です。

代表に選ばれた人は、選ばれた責務から、
派閥通りの投票をします。

結果は下のグラフのようになりました。

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左端の代表を一人だけ選ぶという状況は、
全員で多数決をして、賛成が選ばれる確率と同じです。

グラフを見ると、代表を挟んだ
二段階のほうが賛成が選択される確率が高くなることが分かります。

特に代表者の数を増やしていくと、賛成を選択する傾向は強くなります。

一人一人は優柔不断とはいえ、いちおうは賛成派が多数だったことを考えると、 代表を挟むことで、ある意味正しい多数決が行えていると言えます。

確立的な代表選出・議決

最後に、代表を決めるのも、代表者が議決するのも、
確立的に逆の選択をし得るという状況を考えます。

さきほどと同じように、6割で自分の派閥通りの選択をして、
4割で逆の選択をします。

結果は下のグラフのようになりました。

f:id:u874072e:20181109171311p:plain:w400

代表数に関わらず、賛成を選択する確率が55%~70%あたりでおさまっていますね。

代表として選ばれた人自身も優柔不断な決定をするので、
代表を選ぶ効果はあまりなさそうです。

まとめ

多数決で代表を挟んで二段階の多数決を行う場合に、
どのように結果が変わってくるかをみてきました。

自分に意見がはっきりしている場合には、
二段階の多数決はむしろ逆の選択を生じる可能性があるのに対して、
代表が自分の派閥に責任を持った選択をするのであれば、
代表以外が優柔不断でも正しく多数決が行えることが分かりました。

代表を挟む意味は、みんんあが優柔不断であるという前提の上で成り立っているのですね。

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