クイックノート

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計量カップにおいて大は小を兼ねるか?

計量カップには様々な大きさがありますが、
1リットルの計量カップはなかなかありませんよね。

でも、カレーを作るときは、
800〜1200mlくらいの水を入れるように書かれています。

しかたがないので、複数回に分けて計るのですが、
ここで、ふと次のような疑問が湧いてきます。

この1200ml計る時に、300mlを4回と、
200mlを6回のどちらのほうが正確に計れるだろう。

お茶を湯のみに注ぐときは、複数回に分けて注ぐと、
均等に告げるように、水を計るのも回数を分けた方が良かったりするのでは、
と思っても不思議ではありませんよね。

ということで、少し真面目に、
計量カップで水を計るときのことを考えて見ましょう。

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誤差は累積する

一番重要なのは、複数回に分けて計ったものを合計した時に、
それぞれの測定誤差がどうなるかですが、
これは、累積していきます。

i 回目の測定量と誤差をX_i, e_iとして、
n 回の測定を合計した量は、
\sum_i X_i + \sum_i e_i
となります。

\sum_i X_i が本来目指している量で、
\sum_i e_i が誤差になり、
毎回生じる誤差の足しあわせとなっています。

仮に、毎回の測定誤差が正規分布 N(0,\sigma^2)に従うとすると、
それをn回足し合わせた誤差は、
N(0, n\sigma^2)正規分布に従います。

分散がn倍になっているので、
回数が増えるとそれだけ、測定が不正確になってしまいます。

ということで、単に回数を増やすだけになってしまうなら、
分けて測らずにまとめて測ったほうが正確ですね。

計量カップは大きければいいのか?

回数を分けて計ると誤差が増えてしまうことが分かりましたが、
それでは、何でもまとめて一回で計れるように、
計量カップは大きい方がいいということでしょうか。

極端な話、1リットルの計量カップを使って、
カレーに使う水を計るのが良いのでしょうか?

考えられる不都合は、大きな計量カップほど誤差が大きいというものです。
例えば、太く容量の大きい容器の目盛りほど、
きざみが大きくなるので、目盛りを読み違えることによる誤差が大きくなります。

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このように考えると、細い容器は一度に沢山は測れないけど、精度は高く、
太い容器は一度に沢山測れるけど、精度は低くなり、
少々粗い精度で一度に計ってしまう方がいいのか、
高い精度でコツコツ計った方がいいのかは自明ではなくなります。

シミュレーション

それでは、上の状況をシミュレーションしてみて、
容器の大小と誤差の関係を調べてみましょう。

方法

シミュレーションでは、高さが一定で、
底面積の異なる容器を使って、
一定の水量を測ります。

測る水量は、100リットル、
容器の高さは10cm として、
円筒状の容器を使います。

毎回の測定では、1mm程度の誤差が生じるものとします。

容器の半径を変えていきますが、
半径が小さいほど、
100リットルにするまでに、
測る回数が多くなります。

結果

結果は下のグラフのようになりました。
横軸が容器の半径で、縦軸が最終的な誤差(単位はml)です。

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グラフから、容器が大きくなるにつれて誤差が大きくなっていることが分かります。

容器が大きい方が、計る回数は少なくて済むので、誤差の累積は少ないのですが、
それよりも、目盛りの読み違いによる誤差の方が大きく影響しているということですね。

考察

容器の幅を変えて、大きな容器でまとめて測ると、
誤差の累積以上に測定誤差が出てしまうことが分かりました。

もう少し計算で、この結果を追いかけてみましょう。

計量の回数

容器の底面積をSとすると、
高さは常に一定なので、
計量の回数は\frac{1}{S}に比例して減少していきます。

1回の計量の誤差

一回の計量で、ecm目盛りをずれて読むと、
eSだけ、体積の誤差が生じるので、
1回の計量の誤差はSに比例します。

合計の誤差

合計の誤差の分散は、回数に比例していましたが、
標準偏差を考えると回数の平方根に比例するので、
トータルの誤差は\frac{1}{\sqrt{S}} * S = \sqrt{S} に比例します。

今、底面積Sは、半径の二乗に比例するので、
結局、合計の誤差は半径に比例して増加することになります。

実際、グラフもきれいな直線のグラフになっていたのはこのためですね。

まとめ

誤差が累積することから、計量カップが大きい方がいいのかということを考えてみました。

目盛りを読むときの誤差を考えると、
小さい(細い)カップで何回にもわけて測ったほうが返って正確に測れるのですね。

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